獣の棲む家を見ました。
NETFLIXのオリジナル映画ですね。
ホラー映画です。
主人公は二人の難民夫婦。
スーダンから逃れてきた彼らは、難民の施設で日々を過ごしているのだが、
ついに入国を許され、家と給付を与えられる。
ただし、いくつかのルールを破った場合、施設へ戻ることになると告げられる。
彼らのその時の喜びようと言ったらない。
ほどなくして、荒れ果てた家に連れてこられる彼ら。
家は掃除されてないし、ゴミだらけで、壁紙ははがれているし、床には食べかけのピザにゴキブリが群がっている。
それでも彼らは嬉しくて仕方がない。
ここから始めるんだ。
そう二人で誓う。
彼らには娘が一人いたが、イギリスに亡命する間に命を落としてしまう。
それをずっと気にしている。
家の修繕をしながら、日々を暮らそうとするが、二人の夫婦の間には亀裂が生じていく。
奥さんは、異国の地に居場所はないと感じ始める。
教会を訪ねようとするも、道に迷ってしまうが、白人には声を掛けられない彼女は、空き地で遊んでいる黒人の学生に声をかける。
教会の場所を教えてもらおうとするも、からかわれて追い払われる。
アフリカに帰れ。
黒人であってもイギリス人じゃない、と彼らは邪見にする。
旦那は早くこの国に慣れようと、知りもしないサッカー選手の歌を口ずさんだり、床では食事はとらない、ナイフとフォークを使うんだ、と奥さんをただす。
奥さんが、鉄の味しかしない、というセリフが印象的だ。
それでもなんとか食らいつこうとする夫。すむ家には夜な夜な幽霊がやってくる。
旦那は昼も夜も悩まされるが、”いい移民”になろうと必死だ。
そんな旦那が近くのデパート(スーパー)で、大量生産の服を購入するときのシーンは痛ましい。
新しい服を購入しようと、ポロシャツを眺める。
そこに、でかでかと飾られた白人4人家族の写真はまぶしく映る。
こんな風にならなきゃいけない。
そんな風に、娘の死をわすれ、イギリスという国に染まっていこうとする旦那に妻は不満をあらわにする。
暗い中、でんきもつけずに一人暗闇に話しかける妻。
電気をつけるとからっぽの椅子。
食事のシーンがとても痛い。
旦那はナイフとフォークで食事するが、妻は昔から慣れている自分の手でパンをスープにつけて食べる。
夫婦の間の分断が露呈する。
その次のシーンは、彼がひとりその空間にいることがあらわされる。
家で起きる様々は現象を恐れた旦那は、家を引っ越したいと訴えるも、あなたは難民だ。この苦情をいったら、どうなるかわかっているか、国へ帰ることになると告げるのだ。
この映画では、難民がおかれた状況や、居心地の悪さ、逃げ場のない状況をホラーとして描いている。それ自体が社会的なホラーだ。
そして、この映画はそのような状況でも逃げるしかなかった夫婦の罪の話をテーマにしたホラー映画だ。
良い映画でした。