ドイツ映画祭2019があったので見てきました。日本公開も、4月5日から決まっている本作。
この時期に相応しい単館系のアート系作品でした。
あらましはというと、郊外にそびえ立つ巨大スーパーで働くことになった、身体中に刺青が彫られた青年を通して、そこで働く人々との交流を描く話になっている。
この映画、なんと。
主人公が静かすぎるレベルで喋らない!
なんか喋れ!お前はドラクエの主人公か!
と思いながら最初は見ていました。でも、彼はそういう人だからこそ、ここにいるのだなという気持ちもわかる。
そして、彼が静か故に、彼と関わる人々のことがよく見えてくるという。
多少ネタバレで話します。
この映画は、複数のキャラクターがテーマになっていますが、基本的にはクリスティアンの目線で見聞きした話で物語が展開していきます。
この映画の中で、私が好きなのはその雰囲気や、風景の描写です。
窓が一つもない巨大スーパーの中で、
そこだけで人間関係が築かれており、そこだけであたかも生きているような人たち、変わり映えののない日々が綴られていきます。
そう、なんていうか、ここはシェルター
外の世界と隔絶された空間に彼らは逃げ込んでいるのです。
この閉じられているんだけど、閉塞感があるようで、閉塞感がない、居心地は良く、どっちなんだかわからん、モニョモニョした空間の描き方がとてもいいなと思いました。
また、主人公は、このスーパーで働く女性(夫あり)と仲良くなっていき、そして彼女が好きになっていってしまうのですが、
実は彼女の夫はDV野郎で、彼女が突然スーパーを休むという描写があるのですが、彼女はいつも、肩までのかみをちゃんとゴムで纏めているのですが、腹の虫のいどころが悪い時は、髪がとても乱れているのです。
そして、主人公に当たってしまう。
そんな彼女の夫がDV野郎だと聞いた主人公は、彼女の見舞いにいくわけなのですが、
ピンポンを押しても応答がないので、なんとこの主人公。
開いてる窓から勝手に家に入るんです!
おい、お前、不法侵入だぞ!ていうか
こんな奴いたらめっちゃキモイ
と、私はこの描写を見たときにだいぶひきました。
すげー怖いわ。
という意味では、だいぶふわふわしている部分もある気がします。(普通こんな奴を許すだろうか?)
ちなみに、この主人公は不法侵入したついでに、作りかけのパズルを発見するんですが。
この描写が結構好きだったんですよね。
というのも、このパズル、浜辺にあるヤシの木がそびえ立つパズルなんですが
同じような絵柄のポスターが
スーパーの休憩所にもあるんです
ドイツは、海には囲まれていないため、中々海を見ることがないのだそうです(監督談)
海を見る=バカンスにいく ということもあり、海に対しての憧れがあるのだそうです。
そこで、同じ共通点が、スーパーと彼女の家にあるわけです。
家にいる時はパズルを作ることで逃避し、それ以外では、スーパーにいくことで夫から逃れている。
そんな感じなのかもしれません。
この映画には、
大事なことは言葉では語らない、
そんな良さがあります。
この映画のラストも、言葉では語らないのですが、そのラストの終わり方は、とても綺麗だなと思うような感じなのでした。
一冊の本を読んだときに、ふぅー ってなるような感じの読後感の良さがあります。
原作が読みたいかな。
ちなみに、この作品はだいぶ静かなので、見るひとは選ぶ気がします。
P.S.
ちなみに、終わった後のトークショーは30分以上あったのですが、結構面白い話が多く、興味深かったです。
原題が”通路にて(複数形)”だっていうのをそのときに知りましたが、原題は中々いい題名ですよね。通路にてだと日本の映画館にお客さんが入らない気もするのもわからんでもない・・という複雑さ。
ちなみに、なんで原題が通路なのかといえば、巨大スーパーの倉庫でみんな働いているわけですが、その棚と棚の間が、彼らの通る道、生きている道だからですね。
ちなみに、原題がいろんな題名に化けるって話をしていたのですが、最悪だった題名は、通路での愛というベルギーだったかな、のタイトル。
何がひどいって、ドイツ語でわざわざ題名を通路での愛に改題したところ、だそうですw
それはひどい・・w ドイツ語で書くなら、そのまま通路にてで良かったと思うな。
なんかの昼ドラみたいな題名だな・・。
P.S.がだいぶ長くなったけど、こういう社会派ではないドイツ映画を見れたのは良かったですね。また機会があれば映画祭に参加したいです。