アイダよ、何処へ?を見ました。
U-NEXTですね。
戦争というか、紛争から起きる実際の虐殺事件を映画にしています。
久々の骨太映画でした。すごい。
舞台は、ボスニア・ヘルツェゴビナ。
ボスニア・ヘルツェゴビナという国は、スルプスカ共和国とボスニア・ヘルフェゴビナ連邦とがくっついた感じの国になっているんですが、
そのスルプスカ共和国が、国連が安全地帯と謡っていた土地に逃げてきた一般人を虐殺する事件
スレプレニツァの虐殺事件の話になっています。
ごめん、実はあんまり知らなかったからググったけどね。
で話を戻すと、この映画の主人公は女性、そうアイダなの。
国連で通訳として働く女性なのね。
スレプレニツァっていうのは、ボスニア・ヘルツェゴビナの東部にある土地なんだけど、そこは国連が安全地帯と謡っていた場所だったのよ。
なんだけど、スルプスカ共和国、ムラディッチが率いる軍隊たちがやってきて、安全な場所に避難させてやるから、という名目でバスに乗せて一般人を連れて行こうとするんだけどー・・・そんなうまい話あるわけなくて・・・
で奔走するアイダを描きます。
この映画、もうなんか情報がいろいろ盛りだくさんなんだけどね。
まず、ムラディッチ率いるスルプスカ共和国っていうのは、セルビア人の国なのね。
で、この虐殺の前に、ムスリムの武装勢力によってセルビア人を大量に殺されているわけね。
そのあと、国連の安全地帯に逃げてきた一般人の中にムスリムの兵士がいるんじゃないか?みたいな話で捕らえて処刑しようとしたりもするんよ。
アイダは国連の職員だから、一般人の人たちとは厳密には立場が違っていて、一般人を安全地帯に国連は入れるんだけど、食料も水もないし、物資もない。
トイレだって貸してくれないから、みんな豚小屋のように詰められた屋内で、目隠しのついたてを立ててトイレをしてるんよ。
洗濯だってできないから、汗の染みが付いた服を女性はたらいで洗っているし、そもそも安全地帯の中に入れない一般人が敷地の外まで大量に押し寄せている。
それは冒頭に映し出されるんだが、圧倒されるわけね。
で、そのうちスルプスカ共和国の連中がやってきて、交渉しよう、みたいなことを言いだすんだけど、
どう考えても、交渉じゃなくて脅しなのね。
おいおい、やべぇぞ、こいつは。と成り行きを見守っていると案の定やばい感じの軍隊が安全地帯までやってくるんだけど、
国連は全く何もできないわけ。
しかもなぜか現場の国連の人々は若い連中ばかりで、スルプスカ共和国の兵士におどおどしながら、怖がっているし。
いよいよやばいとアイダが身に感じ始めて、さあどうする?!っていう話なんだけど。
この映画、なんていうか
おぞましいまでの力に抗うことができない、その描き方がすごいのね。
まずやべぇのは、このスルプスカ共和国の兵士の恐ろしさよ。
バスに一般人を乗せるんだけど、
だいじょーぶだよー怖くないよー
と、お菓子や食べ物、水を与えてバスに乗せるんだよ。
やばいやつやんけ・・食べ物くれる奴についてっちゃだめだ・・
そこそこみんな飢餓状態なので、もちろんついていくわけよ。
どう考えても、これはガス室のくだり・・・。
もうどうしたらいいんだよ、っていう。
そうして、アイダは国連の大佐や少佐とやり取りして、奔走するんだけど
まじでアイダが強いんだよ
私は私の家族を守る・・という決意がね、すごいんだよね。
と、結末については言わないでおくが、最初から最後まで圧倒される映画だった。
ちなみに、この虐殺自体は1995年に起きている。
まだ30年弱しかたっていないわけで、どちらの側の人間も同じ国で暮らしているわけだ。
すごい話だ・・・。
そう。
だから、ある意味ホラーでもあり、いろいろ考えさせられるのは後ろの展開。
あの時のあの人が、平和そうな顔をしてすれ違っているのだ。
ちなみに、アイダが家族を守ろうと奔走している間に、自分の元教え子や近所に住んでた人たちがスルプスカ共和国の軍人として出てくる。
だからこれもある意味ホラーなのよ。
自分の知人や隣人が、ある日銃を持って、バスに乗れっていってきたらどうだろう?
でも、どう考えたらいいのだろうか。
子供らに罪はない。私だったらどうするだろうか。
そう考えずにはいられないのだ。
ちなみに、アイダよ、何処へ?を歴史交えて簡単に解説&監督の話も盛り込んだインタビューがYOUTUBEにありました。おすすめです。
これ見ての新たな発見は、主人公の女性と映画の中でムラディッチを演じるのがセルビア人だったということ。
映画に出るにあたって、セルビア人を裏切ったとかいろいろ言われてしまったようだが、映画を見ることで、何かを考えた人も多かった様子。
いろいろ考える映画でした。おすすめです。