二月の鯨

週3~5回いく映画鑑賞感想、たまに消化する積みゲーの感想、映画祭やドラマの話


映画作品鑑賞リスト2024
鑑賞リスト

映画:茜色に焼かれる。いま、生きる。

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茜色に焼かれる、を見ました。

U-NEXTですね。

石井裕也監督の映画です。

 

搾取されつづける母子の話を描きます。

旦那を交通事故で亡くし、やっていたカフェは閉店。同じ年に旦那の父親が倒れて介護施設。旦那が余所に作った子供の養育費を払い続ける主人公、田中良子。

 

交通事故を起こしたのは、高齢者、元官僚のおえらい人、ブレーキとアクセルを踏み間違えたという。

しかし、踏み間違えていないのは、当時のCG映像等から明らか。

このくだりは、池袋のあの事故を思い起こさせる

国民に身を粉にして働いて、の一言に、人のことは全く考えてないと感じさせる。

 

旦那をひき殺した老人が亡くなった葬式に、田中良子は顔を見せる。

きちんと香典を持って。

でも、もう関わってほしくない遺族は帰ってくださいと声を荒げる。

香典の金はあるのに、歩いて帰る田中良子は無言でうつむく。

そこに香典金額のショット。

この時折挟まれる金額が、中々キツイ。

 

旦那の父親の介護費用は、17万ぐらい。年金じゃ払えないから、10万円を負担する。

家賃は市営団地で3万円弱。食費は息子と二人で4万円弱。

田中良子は昼に、ホームセンターでアルバイトをする。

時給930円。東京の最低賃金は1041円。ということは、東京近郊の県境ということだろうか。埼玉の最低賃金は956円。

たまに、川が見えてくる。荒川だろうか。

東京もそうだけど、市営団地は川沿いにも結構多いイメージ。

高島平や、赤羽付近も自転車で走っているとよく見かける。やたら広いが、近隣の商店街はさびれているんだよね。

 

田中良子の時給930円で、暮らしていけるわけもなく、夜のバイトもする。

カリペロという

 

なんていう店名だ!!!!

その名の通りのお店なんだけど、ピンサロで働いてる。

コロナ禍のため、ビニールのカーテンで仕切られ、濃厚接触実施中!という張り紙が、コロナだな、というのを物語る。

マスクして客のブースに入ってくる田中良子は、30は超えているが20代のようにきゃぴきゃぴな声で、接客する。目じりには皺が寄る。

この特殊な痛々しい、猫なで声は尾野真千子さんじゃないとできねーわ!!!!!

控室での歯磨きは欠かせない。

時給は3200円だ。

 

周囲の人々が、世間に対する怒りを訴えても、

まあ、がんばりましょう

と抱きしめるだけ。良子は怒りを見せない。

 

良子の周りには悪意が溢れている。

元バンドメンバーのドラマーは良子に嫌らしく近寄ってくる。

中学の同級生熊木は善人面したクズ男。

バイト先の店長、息子の学校の担任、息子の学校の生徒たち。

仕事仲間のケイと、良子はお互いの境遇を打ち明けあう。

驚くべきは、ケイが良子にかける言葉だ。

自分のことを外側に置いていて、自分の人生を見ないようにしていることがわかる一言だ。

 

そんな良子は、仕事仲間のケイと飲み屋で語り合う。

このシーンは痛烈で度肝を抜かされるが、でも何故か尾野真千子の演技に楽しくなってしまう。

真千子すげぇ

すげぇよ真千子。

 

こんな悪意にまみれているなら、自分が全うに生きていくしかない。

だから、金は受け取らない。愛したあの人ならそうするから。

 

この映画ではやたらと赤色が出てくる。

ホームセンターで捨てられそうになっている花。

良子が作るミニトマトと豚肉の串焼き。

良子の勝負服。

息子が初めて乗る自転車。

群馬まで自転車に乗って走っていくときの息子のシャツ。

旦那の髪のメッシュ。

いや、正確にいうときっと茜色なのだろう。

 

二人乗り自転車が合成なのは少し残念だが、日本の法律的にそれはNGなのでしょうがない。

父親が亡くなったきっかけとなる、自転車には乗っていけないという家族ルールがある中、

二人が赤い自転車にのって走るというのには意味がある。

 

そういえば、映画の完成報告会で真知子は赤色のドレスを着ていたのを思い出したよ。

良い映画でした。

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