空白を見ました。
ヒメアノールの吉田恵輔監督ですね。
万引きした中学生の少女を追いかけたスーパーの店長松坂桃李。運悪くも、車道に飛び出した少女を次から次に車が跳ねてなくなった。
少女の父親である漁師の古田新太は娘が亡くなった事実を受け止めることができず、万引きしたなんて嘘だ、学校でいじめがあったはずだ、と奔走するという話です。
事故後の道路の血の跡にざわざわするね・・。
ちょっとネタバレで話すとね。
この映画ね、なんていうか
とってもぎちぎちするんですね
やるせない映画です。
松坂桃李はここでもスーパーの店員というか店長やってます。
こういう役似合うのかな。
おつぼねおばちゃん店員で寺島しのぶが演じています。
彼女は、おつぼねらしく、
万引きを捕まえたのは悪くない!正しいことをした!間違ってないと訴えなくちゃ!
と、松坂桃李を説得しようとし、家に押しかけてゴミを捨てようとし、まるで真犯人クラブに出てくる近所の主婦みたいに差し出がましく振舞います。
彼女の自己中な
正義の押し付けと彼女の身勝手な好意によるものです
いるよね・・いるよねえ・・。って思ったよ、こういう人いるんよね。
ただね、こういう人って
良かれとおもってやっている、んですよね。
良かれと思ってっていうのが良くない。
断れない人もいるんだけど、気づいてるんだか気づいてないんだか。
気づくだけの力はあるはずなのに、勝手に好きでやっているボランティアに参加しない女性に対して、やらしい感じの皮肉を浴びせる。
彼女は、良かれと思ってやっている。(と思いこんでいる)
と、お局あるあるの恐ろしさを垣間見る。
古田新太は、厳格というか、彼も
親として正しいと思うこと、子供にとって正しいと思うことを
娘に押し付けていた
娘は、マニキュアなんて盗まない、持っているところは見たことがない、スマホなんていらない。
そういって、窓から投げ捨てる。
ごはんを食べ終わった後、娘は外に出て、液晶ディスプレイが割れたスマホを眺める。
電源は入るようだ。壁紙は熊のかわいい画像。
娘が死んだあと、離婚した妻は、夫の傍若無人ぶりに、もうやめなよと注意する。
しかし、古田新太はそんなのダメだと譲らない。
離婚した妻は、そこで
貴方は何を知っているの?あの子の好きなものを知っているの?何を知っていたの?
ととがめる。
父親である彼は、娘の信じたくないことを聞くと、口を紡ぎ、電話を切る。
信じたくないし、自分がわかってないことを信じたくないし、自分が何もできてなかったことを信じたくない。とにかく聞きたくない。
万引きを追っていったスーパーの店長と、死んでしまった中学生ということで映画の中では、醜悪な報道についても言及する。
醜悪な報道
この感じはミセス・ノイズィと似ている。
インタビューは面白可笑しくするために切り取り、どこまでも追いかけてきて、飽きたらもう報道しない。
なんて醜悪で恐ろしい
そうして、色々なことが連鎖して、不幸が連なっていく。
途中で、とある葬式に赴く、古田新太と葬式の喪主との会話が切ない。
彼らが思う想いは相反していて、思う想いの度合いは同じぐらい強いのだ。
そうして、時間が父親を癒していく。
娘は何が好きだったのか、どんな漫画を読んでいたのか、どんな絵を描いていたのか。
そのあとを辿る父親は切ない。
娘の部屋には、熊のぬいぐるみが置いてある。そのことに気づくのはもっと後だ。
娘は、自分の写真の顔を黒くマジックで塗りつぶす。
この映画で、娘が万引きした理由は語られない。
だが、最後に父親が見た絵の真ん中には、あるものが浮かんでいるのだ。