足跡はかき消してを見ました。
公園で暮らす父娘が主人公。
やたらと広い公園の中でひっそりと暮らしてる。
食べ物は極力最小限に、湿気の多い公園は苔が茂っていて、なかなか火がつかないこともある。
お腹が空いていた娘のトムは付かないからガスを使おうよ、と声をかけるも父は無駄にするなの一点張りで使おうとしない。
業を煮やした娘はガスを使うんだけど、どちらも頑固そうだな、ということがわかる。
たまに街に出て食材を買いに行き、薬をもらってはその薬を売ってなけなしの生活費を手に入れるという。親父さんは、元兵士でptsdを患っており、悪夢にうなされ、直上を飛ぶヘリコプターの音に苛まされる。
しかし、不運なことに彼らは見つかってしまい、
「善意ある」人々によって社会復帰を促されることになる、という話。
この映画、まぁ父娘の話なんだけど。
最初見つかったとき、お父さんになにか変なことされてない?みたいなこと聞かれるんだよね。一緒のテントに寝てて、みたいな。
見た目十代後半の娘さんだし、聞くのは至極当然なのだけど、父娘側からずっと見ているこちらとしては少し不快にもなる。
学校はいってるの?家はどこ?の問にすんなり出てくる言葉はない。
一体いつから公園で暮らしていたのだろうか。
その背景は説明しない。
勿論、親父の過去を映像で説明するようなことはない。
ここは良いですね。
そうして、二人は家を手に入れて、職を手に入れて、学校に行きなさいと
「社会」を強要される。
それが正しい、それしか道はないというように。
でも、親父はずっと苦痛でいて、娘は別にそういう社会に適用した方が楽じゃないかな?って思ってて、どんどんすれ違っていく。
蜂は別に敵じゃないんだよ。刺したら自分も死んでしまうし。
娘は諭す。
この映画は「正しい」とされる社会で生きていくべきかを考えさせられる。
あなたの家はどこ?と尋ねられた娘は至極当然に家はパパだよと答え、お互いがお互いの姿が見えず不安になると家の外に出て名前を呼ぶ。
娘の一途さと迷いの見える眼差しが素晴らしい。
父娘は本当にお互い支え合って生きてきて、本当にお互いが大事なのだ。
けど、お互いが何を選択するのかをずっと考える。
物語の途中、兵士の知り合いがたくさんいるおばちゃんと出会うんだけどね。
彼女は強要もせず、距離を取って、親身すぎることはなく、気遣うんだ。
彼女はおそらく、沢山のそういう人を見てきたに違いないことがわかる。
何かを問い詰めることも、聞くこともない。
一番好きなシーンは、父娘がチッチッと合図をするときだ。
いってくるよ、愛してるよ、そんな意味が込められている。
それは前と後では同じ意味だが違う意味だ。
物言わぬ父娘のラストシーンがとても胸を打つ話になっていた。
おすすめです。