少女は自転車に乗ってをみました。原題は、Wadjdaです。
主人公の少女の名前、ワジダです。
この映画ですね、少女が自転車に乗りたい一心で、手に入れるために奔走する話なんですが、なんと驚くべきことに
全編サウジアラビアロケです。かつ、サウジアラビアの俳優さんで撮っています。
当時、サウジアラビアでは、女性は自転車に乗ることが許されませんでした。女の子ももちろんです。そんな中、撮影された本作。
意気込みを感じます。
話を戻すとですね、ワジダ、近所の男の子とちょっとしたことがキッカケで、自転車競争してやるんだから!!という展開になり、自転車を何がなんでも手に入れるために奔走するんですよ。
基本的には子供の目線で描いているんですが、ちょいちょいサウジアラビアの現在の境遇なんかも描いているんです。
とかく、よく出てくるのが車のシーンです。
お母さんは、車で片道3時間かかるところに働きに行っているのですが、サウジアラビアでは当時女性が運転する権利がなかったため、男性のドライバーを雇っています。それにみんなで相乗りして、職場まで向かうのです。
小学校まで送り迎えするシーンでも、女性は一人たりとて運転していない。
こういうところをシーンで見せてくれます。
そんな主人公は小学校へ通っている(女学校かな?)わけですが、みんなと違って、ヒジャブも深くかぶることはせず、頭の髪飾りを少し見せて、靴もコンバース(かな?)で真っ黒の靴は履かない。
そんなワジダを校長は、困ったような顔で見つめています。
そんな学校の中では、女性たちはヒジャブを解いて、過ごしているのですが、学校の中で大工のような人たちの目に入るような場合は、
男性の視界に入らないようにしなくちゃ!
と、建物の影に皆が隠れるのです。でも、ワジダは隠れない。
なんで、隠れないといけないの?
ワジダの日々の疑問が沸々と湧き上がっているシーンです。
そんな彼女たちは、おしゃれをすることが許されないので、服の下などに、マジックで模様を書いたり、靴の爪にマニキュアを塗ったりして楽しむのですが、それを校長に見つかるや否や、叱られてしまう。
抑圧がよくわかるシーンです。
そして、おしゃれに対する抑圧のシーンがまた出てくるんですが。
お母さんが、赤いドレスを試着する部分ですね。
ドレス売り場に行くと、売っているのはもちろん男の人なわけです。
それで、お母さんが、赤いドレスを持って、試着はできますか?って尋ねるんですよ。
試着はできますよ、通りの端にトイレがあるよ。というわけです。
そう、女性の試着室は、トイレなんですよ。
なんということだろう。でもそれがそこでは普通なんですよ。
ちょいちょいネタバレになってしまうんだが、言いたいことがシーンだからちょっと申し訳ない感もあるが、言いたい。
この映画では印象的なシーンが多々出てくるわけですよ。
中でも、家系図のシーンの説明。
ワジダが、家系図の絵について質問するんですわ。家系図を表す木の絵が飾ってあるんだけどさ、そこの幹とか葉っぱには、名前が書いてあるんですよ。
でも書いてあるのは男性だけ、女性の名前は書かれていない。
そこで、ワジダは自分の名前を書いて、そこの絵に貼り付けるんです。
心が痛いシーンです。
そんなワジダ家には、第二夫人を検討しているという話が舞い込むのです。
その話の最中も、夫婦は喧嘩したりなんだりするわけです。
一夫多妻制であることは、特に不思議な感じはしないのですが、どうしてこんなに喧嘩しているんだろう?と思うわけですが、それは途中で判明するわけです。
ワジダを産む時に、お母さんは死にそうになったというわけです。
この一言が表しているのは、もう子供をこのお母さんは産むことができないってわけです。
でも、ワジダ家としては、男の子が欲しい。
お母さんが切ない。
そうこうする切ないシーンが、裏側で見え隠れする中、ワジダは自転車を手に入れるために奔走するのです。
この映画をみて、私はこの映画の素晴らしさに感動したのですが、
何よりも素晴らしかったのは、
言いたいことを直接的な表現では決して伝えないんです。
でも、伝わるようにその中間をとったバランスの良さで、うまく伝わるようにしているんです。そこが素晴らしい。
そして、何よりも素晴らしいのは、このエンディングです。
この抑圧された世界で、少女は、前だけを見ている。
どこへ行こうかと見つめている。
自分の進む世界は、この狭い世界だけではないんだと。
自分の足で漕いでいける。
そう思わせる未来が、素晴らしいんです。
感動しました、涙が出ました、オススメです。
ちなみにですが、この映画、なんと女性監督なんですが、女性監督さんは、男性のみなさんと一緒に仕事をすることができない風習とかがあるので、トランシーバーで指示したり、秘密裏に自転車のシーンを頑張って撮ったりとすごい意気込みなのです。
(詳しくは、DVDのメイキングを見ると説明があります)
この映画に出会えてよかったな、そう思いました。
監督さんは、ハイファ・アル=マンスールという方らしいですね。
応援しています。